日本のトランスジェンダー男性が、性別を公的に女性から男性へ変更する場合、卵巣摘出手術を強いられる現行の法律に関して、法廷で争っている。
係争を起こしているのは臼井崇来人(うすい・たかきーと)さん(43歳)、男性を自認、戸籍上でも男性として性別登録したいと考えているが、現在の日本の法律では女性から男性へ性別変更を行うには、未婚で実子がいないこと、卵巣摘出手術を受けなくてはならないことを条件としている。
臼井さんは不妊手術を行わずに性別変更が出来るよう、家庭裁判所へ訴えを起こしたが申し立ては却下された。
審判では、性別変更の要件の一つに「生殖腺や生殖機能がないこと」を定める特例法について、「身体に著しいダメージを伴う手術を要求するのは、自己決定権を保障した憲法13条に違反しており、無効だ」と主張した。
これに対し、決定は「(特例法の手術要件は)元の性別の生殖能力が残っているのは相当ではないことから定められたと解される」と指摘。「憲法13条に違反するほど不合理な規定ということはできない」と結論づけた。
臼井さんは、性別変更に避妊手術を要件とすることに関して、トランスジェンダーの実態を把握していないと指摘、以下のように述べている。
「ジェンダー・アイデンティ問題を取り巻く環境は人によって様々で、全てのケースに今の法律が当てはまっているわけではありません。避妊手術を受けて後悔した、と一部の人から聞いたこともあります。
一番の問題は避妊手術の有無ではなく、個人としてどのように生活したいか、ということです。」
多くの国々で、性別変更に際して避妊手術が要件として挙げられているが、最近では条件が緩和されつつある。
2012年スウェーデンにて、強制避妊手術の要件が肉体的な完全性を侵害、自発的に行われているとは考えにくいと結論付けた。また国連開発計画は、臼井さんのような係争が世界中で起こり、時代遅れの法律に挑むことが今後増えるのではないかと記している。